蛤は、形が栗に似ていることから「浜の栗」とも呼ばれていたことが語源とされています。一つの貝殻は他の貝殻とかみ合わせが決して合わないことから、女子の貞操の象徴として結納やひな祭りなどに良く用いられます。
蛤は古く縄文時代から食べられていました。日本書紀にはイワカムツカリノミコトが景行天皇に白蛤(うむぎ:はまぐりの古名)と堅魚(かつお)を料理して差し上げたと記されていて、一般にはこの話が日本料理の起源として伝えられています。
蛤のむき身を佃煮にした時雨蛤は、三重県桑名の名産として有名です。時雨煮は魚や貝、肉に生姜を加えて塩辛く煮詰めたものをいいます。
潮仕立てというのは、素材となる魚介から出た出しに塩味をつけた汁物をいい、蛤はこの潮仕立てや蛤の潮汁として用いられます。
蛤の貝殻は碁石としても使われ、白石は蛤の殻で、黒石は那智黒(和歌山県那智地方産の黒色の特に硬質な岩石)で作るのが上等とされています。(2013年掲載)