エジプトなど地中海沿岸で古くから栽培されてきた非常に歴史の古い作物です。日本で初めて文献に登場するのは17世紀とされています。
出回っているのは大粒種で、大きさが一寸(約3㎝)もあり、河内一寸(かわちいっすん)や於多福(おたふく)などと呼ばれる多くの品種があります。
塩茹でにしたり、甘く煮たお多福豆が一般的ですが、香川県の郷土料理に空豆を使った醤油豆があります。焙烙(ほうろく)で炒った干した空豆を醤油や砂糖、唐辛子で味付けした調味液につけたもので、見た目は煮豆風ですが、食べてみると歯ごたえがあり硬いという讃岐ならではの料理です。
花が上を向いて咲くことから空豆と呼ばれています。莢の形が蚕の形に似ている、また蚕の繭ができる頃が美味しいことから蚕豆とも表現されます。春から初夏にかけておいしくなります。
豆の皮の黒い部分はお歯黒ともいわれていて、料理屋では、この黒い部分に包丁で切り目を入れて身を取り出しやすくしたり、この部分を切り取って料理します。
茹でて裏ごした空豆と葛をあわせて作った豆腐料理はひばり豆腐、裏ごした空豆を和え衣にした料理はひばり和えと呼ばれています。美しい緑色を生かした空豆の翡翠煮(ひすいに)もこの時期の定番です。